オーストラリアにはコアラやカンガルーなどの固有種が有名ですが、カモノハシはさらに特異な存在です。
カモノハシはカワウソに似た外見を持ち、ビーバーのような平らな尾と水かきのある足、そしてカモのくちばしを持っています。
この記事では、カモノハシの珍しい特性と分類について詳しく説明します。
カモノハシの生物学的分類
カモノハシは哺乳綱の単孔目に属し、カモノハシ科カモノハシ属として分類されます。カモノハシはユニークな進化を経て現在の分類に至っています。
多くの哺乳類が胎生である中、カモノハシは卵を産んで繁殖するという点で、鳥類や爬虫類と共通しています。
同じくオーストラリア原産で卵を産むハリモグラも、カモノハシとともに単孔類に分類されます。
単孔類とは、「一つの穴」を意味し、これは生殖と排泄が同じ穴で行われる特性です。この生殖排泄器官は総排泄孔と呼ばれ、カモノハシとハリモグラに特有のものであり、一部の鳥類にも見られる現象です。
カモノハシが哺乳類に分類される理由
カモノハシの繁殖方法
カモノハシはオーストラリア東部やタスマニア島の河川や湖沼に生息し、自ら掘ったトンネルで暮らしています。
この動物は巣で直径約2cmの卵を2個産み、体温で温めて孵化させます。
孵化後、子どもたちは約4か月間、母親の分泌する母乳を飲んで成長します。
卵を産むが哺乳類とされるカモノハシ
通常、哺乳類の特徴は新生児に母乳を与えることですが、カモノハシも例外ではありません。
カモノハシは乳首がなく、腹部の乳腺から滲み出るミルクを幼体に供給します。18世紀末に初めて発見された際、乳首がないことが注目されましたが、後の解剖で乳腺が存在することが確認されました。
このように、乳腺からの母乳供給がカモノハシを哺乳類に分類する根拠となっています。
また、卵を産むことが発見されたのはそれから約80年後で、その哺乳類としての特性がさらに明確になりました。
カモノハシ、哺乳類の中でも最も原始的な存在
カモノハシとハリモグラに関する最新の全ゲノム研究により、これらが哺乳類の中で最も原始的なグループに位置付けられていることが明らかになりました。
研究によると、哺乳類の祖先は約3億50万年前に鳥類や爬虫類の祖先と分岐し、その後約1億8760万年前にカモノハシの系統とその他の哺乳類の祖先が分かれたとされています。
カモノハシとハリモグラの分岐は約5460万年前とされ、カモノハシが持つ卵生や総排泄孔などの特徴は、哺乳類の進化過程で非常に初期の段階から存在している証拠と考えられています。
カモノハシの生活習性
カモノハシは日本では「鴨嘴（おうし）」、英語では「platypus」と称されます。
この名称は、カモのくちばしに似たその特徴的な形状に由来しています。
カモノハシは夕方から明け方にかけて活動が活発になり、ほとんど単独で生活するため観察が難しい動物です。水中では非常に俊敏に動き、前足で水をかき、尾で方向を調整しながら泳ぎます。
食事は水生昆虫やエビ、ザリガニ、貝類、ミミズなど多岐にわたり、独特のくちばしを使って巧みに捕らえます。
カモノハシは視覚や聴覚に頼らず、くちばしの感覚で獲物の位置を正確に察知します。
カモノハシの身体的特徴
カモノハシは恒温性の哺乳類で、体長は40〜60センチメートルに及びます。
この動物は卵を産み、水かきのある足で巧みに泳ぎますが、歯は持たず、尾は水中での操縦に役立ちます。
オスは特に、後足のかかとから毒を分泌する能力があり、これを縄張り防衛や繁殖期の争いに活用します。この毒は他の大型動物に対しても危険を及ぼすことがあります。
また、カモノハシのくちばしはゴムのような質感を持ち、水中の微細な圧力変化や電流を感じ取るセンサーが内蔵されています。
このため、視界が効かない暗闇でも獲物を確実に捉えることが可能です。
さらに、カモノハシの毛皮は紫外線によって青緑色に蛍光する特性を持ち、これは一部のアメリカモモンガやオポッサム類に見られる珍しい現象です。
日本でカモノハシが展示されない理由
日本の動物園や水族館では現在、カモノハシを展示していません。
これはカモノハシがオーストラリアで厳重に保護されている希少動物であり、基本的に海外への移送が認められていないためです。
かつてアメリカでの飼育例もありましたが、現在ではオーストラリア国外でカモノハシを観察することは非常に困難です。
カモノハシを直接見たい場合はオーストラリアを訪れる必要があります。
ただし、東京の国立科学博物館ではカモノハシの剥製を見ることができ、三重県の鳥羽水族館では関連映像を鑑賞することができます。
カモノハシについてのまとめ
カモノハシはその独特の特徴から世界的に注目される動物です。
卵を産む哺乳類という珍しい特性を持ち、オーストラリア原産のこの動物は、自然の中でのみ見ることができます。
オーストラリア以外では、公共の展示場でカモノハシを見ることはほとんど不可能です。カモノハシは夜行性で独立して活動し、水中生活に適応した驚異的な能力を持ちます。
オスは繁殖期に特有の毒を分泌し、視覚や聴覚はあまり発達していませんが、クチバシには獲物を感知する高度なセンサーがあります。
その奇妙な外見と行動は、科学的にも進化的に見て非常に原始的な哺乳類とされています。
